一縷の夢路
娘の肩に ひとしずく
夜露が落ちて はじけます
玉虫色が 散らばって
光沢帯びた 背中から
ひんやり生えた 羽が伸び
ふるさとの空 飛んでゆく
娘の頬に ひとすじの
か細い風が よぎります
都会の町を 射抜くには
あまりに華奢で 覇気もなく
ふざけて蝶を 揺り起こし
別れも告げず 風は去る
娘の喉に ひとかけら
ザクロの種が 詰まります
口の先まで 出かかって
飲み込まれずに からまった
思い出せない 果肉の味
熟れかけていた 夢の実の
娘の耳に ひと知れず
光の声が 届きます
研ぎすまされた 音をたて
雲の切れ間を 貫いた
あとから影が ついてくる
娘は先に 旅立った
初演:2012年9月5日 東京文化会館小ホール ヴォクスマーナ第27回定期演奏会
再演:2017年1月12日 豊洲シビックセンターホール ヴォクスマーナ第36回定期演奏会
「創団20周年シリーズVol.2〜伊左治直アンコールピース1ダース記念全曲演奏会」
再演:2023年1月28日 横浜みなとみらいホール小ホール
Just Composed 2023 Winter/Spring in Yokohama -現代作曲家シリーズ-
演奏:ヴォクスマーナ、西川竜太(指揮)
作曲:伊左治直