恋の回旋曲
夜を明かして 舞ひ戯るる
遊楽の蝶(有楽町) 羽目外し
呑めや唄えや 大虎の
どんちゃん騒ぎ 野放の図
頭(図)に乗せたまふ 月桂冠
「嘆けとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな」
月におぼゆる しんばしぃ(シンパシー/新橋)
嗚呼たまゆらの 七夜月
辛口女将に 毒づかれ
まさかまさかの 泣き上戸
ヤケっぱちかや 一気飲み
酒気帯びたりし 高架下
ぐるぐるぐるり はしご酒
ぐるぐるぐるの 酔ひどれ娘
急がば回れ ぐるぐると
各駅停車 環状線
浜松ちょろり(浜松町) ゆきかぐれ
吹きしく港の 潮風こそ
たちまち田町に かほりけれ
流し品川 宿場町
区区たる面子 五反田がえし(ごった返し)
子の刻過ぎれば さはれとて
いやいやそろそろ お〜先(大崎)おいとま
発車オーライ 出発進行
間一髪かな 終電車
ぐるぐるぐるり 線路は続くよ
ぐるぐるぐると どこまでも
蘇るは 昨夜の記憶
ガタンやゴトンと 揺れる思ひ
何たる誤算 男やもめの
奥手の内を 読めぬとは
思ひもよらぬ 求愛に
意外や意外 面食らひけり
目黒の(目の黒い)うちは 恋は重荷よ
忘るるなかれ 過去の罪
ずしり残りる この重みこそ
本格ヱビス(恵比寿)の 口当たり
ぐらぐらぐらり あまりてなどか
くらくらくらっと 人の恋しき
こわばる面の 内に秘めたる
ひた向きの相 ちらちらり
芳醇たるや 渋や(渋谷)後味
げにほろ苦き 恋心
一層の旨み 深まれど
原宿(腹)の内 さしも知らじな
不意に脳裏を 代々木る(よぎる)は
新宿回りて 外回り
新大久保を 過ぎし頃
高田の婆(高田馬場)の お告げなり
「わが中空に なすな恋」
メジロ(目白)の如く チィチィと
笑う婆(ばば)の背に いけフクロウ(池袋)
げにげにしくも あなどれぬ
ガタンゴトンとは やかましや
めぐりめぐれば 色恋話
ぐるぐるぐるり 目が回る
おお束(大塚)の間に 巣鴨かも
駒込(細々)続く 田畑((田端)抜け
西に一歩たり(西日暮里) 近づけば
日報得たり(日暮里)や 収穫祭
かくとだに えやは言う
窓越しに見ゆ うぐいすだに(鴬谷)
忍ぶれど 色に出にけり
ぐるぐるぐるり ぐるぐるり
誠の恋を 知ればこそ
雲を突き抜ける 天声人語
「なんぼう美しき 荷にてはなきか」
輪廻の果てに 女はやうやく
キミドリの名を 取り戻し
上界(うえ)の(上野)授かりし 羽衣広げ
逢わむとぞ思ふ 男の元へ
「さては天人にてましますかや」
のどごしのよい 生声に
天(あま)つ袖ふり 答へたり
「我こそは 山手の女御」
遥か空高く 舞い上がれば
足元広がる 馴染みの町
徒衆ひしめく 御徒町
秋葉の原(秋葉原)に 神田川
此処は東京 東の都
初演: 2013年8月22日 港区立高輪区民センター区民ホール Noh X Contemporary Music
再演:2014年11月2日 ヨコハマ創造都市センター1Fホール
NIKKEIアートプロジェクト Time to Time -能と現代音楽が出会うとき
再演:2014年11月2日 大分平和市民公園能楽堂 平和市民公園能楽堂 & 大分県立美術館
OPAM presents 青木涼子公演 能×現代音楽 ~新しい文化の形を創ってみたい~
再演:2016年2月20日 SHIBAURA HOUSE Noh X Contemporary Music vol.4
演奏:青木涼子(能)、會田瑞樹(打楽器)
再演:2017年5月20日 浦安音楽ホール青木涼子 能×現代音楽(能:青木涼子、打楽器:畑中明香)
作曲:小出稚子