不帰の異客
- 新美桂子
- 2022年9月23日
- 読了時間: 2分
更新日:2022年9月25日
バオバブの木がずぶりと一本
頭から勢いよく突っ込んで
真っ逆さまに生えたまま
足をバタバタ駄々こねて
根もなく葉をも蹴散らせば
あれこれあべこべざわめいた
ブーフブーブ バオバブーブ...
日本へ渡ったキリンが二頭
冬を越せずに三途川
頭をもたげ舌を舐めずり
黄昏ながら夢見るは
浮世に遠き思ありき
真っ赤に染まるサバンナの空
どどいつどどいつ どどいつどいどい...
雪道を疾走するトロイカ
地獄の番犬ケルベロス
三つの青ざめた顔を振り乱し
風を引き裂き目を血走らせ
最果ての地を駆け抜ける
Родные, Стой!(兄弟よ、止まれ!)
custode sepulto!(執行人、葬られたり!)
「ダンテは横たわる亡者達の上を、空気を踏むように歩いて進む」
葬られた鐘の音に縋るしゃれこうべ
四方から吹きつける石の息づかい耳元に冷たく
カタカタと顎を震わせ踊るカタコンベのデカダンス
Sinneru, sinnieru li me anni,sinneru, sinnieru e ʼun sacciu unni.
(幾年も幾年も時が過ぎ去った。 時が過ぎ去り、何処にいるのか分からない)
Idda mʼarrispunniu ʼocu gran duluri, muriri senza toccu di campaniʼ.
(髑髏は悲しそうに答えた。「私は教会の鐘の音も聞かずに死んだ」)
極楽浄土の蚊帳の外
お祭り騒ぎの百鬼夜行
月光菩薩のお目溢しに
腹を空かせた付喪神
五粒念じて南無阿弥陀
米びつに宿る爪弾き
おん せんだら はらばや そわか...
無花果のまだ青い実が
風に揺られ振り落とされるように
そして心地よい言葉は蜂蜜のように
無限の落下によって生じた風の中で朽ち
六角形の宇宙に消えゆくものたち
「stat rosa pristina nomine, nomina nuda tenemus...」
(以前の薔薇は名に留まり、私たちは裸の名を手にする)
アンモナイトの化石に 囚われの数え歌
奈落の星雲に渦巻く 幾何学的ナイトメア
七つの曜日はあてどなく 螺旋の迷宮を彷徨う
シュメールアッカドバビロニア
ヒッタカミタンニアッシリア
エジリジメジカルアケメネス ア
ラムフェニキアヘブライ人
村八分のパイポパイポ
パイポのシューリンガン
シューリンガンのグーリンダイ
グーリンダイのポンポコピーの
ポンポコナーの弔い上げ
普放無量無辺光 無碍無対光炎王
清浄歓喜智慧光 不断難思無称光
超日月光照塵刹 一切群生蒙光照
かんかんのう きうれんす
きゅうはきゅうれんす さんしょならえ
さあいほう にいかんさん
いんぴんたいたい やめあんろ
めんこんふほうて しいかんさん
もえもんとわえ ぴいほうぴいほう
初演:2017年3月15日 東京文化会館小ホール 東京混声合唱団第242回定期演奏会
公開:2017年6月25日 NHK-FM「現代の音楽」
演奏:東京混声合唱団、水戸博之(指揮)
作曲:伊左治直
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