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カランの歌

  • 執筆者の写真: 新美桂子
    新美桂子
  • 2022年9月23日
  • 読了時間: 2分

更新日:2022年9月25日

日本人の温泉への愛。

それはどこの国よりも深くてね、

あー自慢だよ。

昔も今も生活の中に浸透している、

天然の身近な宗教かもしれないね。


ヨーロッパに教会音楽があるなら、

日本に温泉音楽があってもいいな。

掛け流しの洗礼を浴びれば誰しも、

歌いだしたくなるでしょう。

讃美の歌を。


どっしり高座に構える番台さんは悟り顔、

さては神様の使いの者かしら。

暖簾分けを許されたなら、続く道は開けるのかしら。

脱衣所では何もかも、厄介を脱ぎ捨てて、

結界を越えればそこは、湯気立ち込める桃源郷。

まさに湯ートピア。

大浴場か大聖堂か、天上に満ちる言霊と、

鳴り響く神聖な、カランの音。


カランカラン…


柔らかな風纏う匂い。

それはどこか懐かしく、身に沁みる。

ああ湯の町よ。

四季折々の彩りの中に染まる人の声、

空高く煙も神々しく棚引いてた。


そっと目を閉じたなら浮かぶよ、

めいっぱいの湯畑の国。

奥座敷に息づく自然の恵みが、

まるで魔法のように、

解き放たれて。


語り継がれる伝説、先人からの贈り物。

幻でもいい。信じてみようかしら。

原泉から湧き溢れ出る、夢のような湯舟に揺られて、

露天の風情漂う空間に、魅せられた瞬間に黄昏る空。

湯ノ花舞えばオーヴァーフロー。

巡る巡りゆく…

日暮れの街へ繰り出す頃、石段に響く下駄の音。

足繁く行き交わす、カランカランと。


カランカラン…



                                  

初演:2014年9月7日 青山スパイラルホール

和の魅力発見シリーズ Traditional+(トラディショナルプラス)【vol.5】Voice Surfing 声の系譜

演奏:室生述成(聲明)、観世喜正(謡曲)、木津茂理(民謡)、坂本美雨(ポップス)

作曲:伊左治直「ユメノ湯巡リ声ノ道行」

公開:2016年04月13日(ディスクユニオン)「Banda Choro Eletrico」収録

(演奏:バンダ・ショーロ・エレトリコ)


 
 

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